不正アクセスやなりすまし対策の重要性が増す中で、確実な本人認証の実現は多くの企業が抱えている課題の1つです。SMS認証は、携帯電話番号を用いる信頼性の高い多要素認証として注目されており、幅広い業種で活用が始まっています。万が一パスワード情報が漏洩してしまっても、SMS認証を併用することで、安全な環境で本人確認を行えます。

本記事では、本人認証手段としてSMSを導入するメリットや注意点、企業での具体的な活用事例や導入時のチェックポイントを解説します。SMS認証の導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

この記事の内容
  • SMS認証とは、SMSで届く認証コードを用いて本人確認を行う認証方法のことで、セキュリティ対策に有効な多要素認証の1つ
  • なりすましや不正アクセスのリスクが高まっている現代において、ID・パスワードと併用してSMS認証による本人認証を行うことでセキュリティを高められる
  • SMSはほとんどの端末に標準装備されて、携帯電話番号でやり取りするため高い到達率や開封率が期待できるなどの理由で本人認証に適している
  • LINEやInstagramなどのSNS、オンラインバンキングなど金融取引、ゲームアプリなどSMSによる本人認証が必要なシーンは多方面にわたる
  • SMS認証サービスによる本人認証を導入した企業では、SMS未達の顧客問い合わせ対応が減少し、業務負担の軽減や顧客満足度の向上を実現している
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SMS認証とは

SMS認証とは、SMSで届く認証コードを使って本人確認を行う、多要素認証の1つです。SMSは、確実に本人へメッセージを届けられることから、セキュリティ対策に有効な多要素認証として活用されています。

関連記事:SMS認証とは?メリット・デメリットと導入方法を紹介

企業が多要素認証を導入する理由と必要性とは

インターネットの浸透とともに、より強固なセキュリティ対策が企業に求められる中、多要素認証は1つの効果的な手段として導入が進んでいます。ここでは、多要素認証のセキュリティレベルや手段の種類、他要素認証が注目されている背景について詳しく見ていきましょう。

多要素認証のセキュリティレベルと手段の種類

多要素認証とは、セキュリティ強化を目的とした、3種類の異なる要素を使って認証する方法です。3種類の要素は「知識情報:パスコードやPINコード、秘密の質問など」、「所持情報:スマートフォンやハードウェアトークン、ICカードなど」、「生体情報:指紋や声紋、静脈など」に分けられます。このうち、2つ以上の異なる認証要素で認証するのが多要素認証です。異なる要素なので「パスコード」と「秘密の質問」は、複数の認証を行っていますが、多要素認証ではなく、同じ「知識情報」での二段階認証です。

多要素認証は、あくまでも「知識」「所持」「生体」から、異なる2つの要素を認証する方法を指します。そのため、SMS認証はIDとパスワードなどの「知識情報」と、スマートフォンなどの「所持情報」の要素を使った多要素認証といえるのです。セキュリティレベルは「AAL (Authenticator Assurance Level)」という3段階のレベルで次のように定義されています。「AAL1:単要素認証でOK」「AAL2:2要素認証が必要(ソフトウェアベースでOK)」「AAL3:2要素認証が必要(2要素目はハードウェアを用いたものは必要)」の3段階です。

具体例としては「AAL1はパスワードだけで認証」「AAL2はパスワードとSMS認証が必要」「AAL3はパスワードとハードウェアトークンなどが必要」と定義されています。多要素認証にはSMS認証以外にもさまざまな手段があるなか、なぜSMSが多要素認証として選ばれるのでしょうか。

多要素認証が注目される背景

SMS認証は、多要素認証の1つです。企業がSMS認証などの多要素認証を導入すべき理由は、サイバーセキュリティを強化するためです。2022年現在でも、サイバー攻撃による情報漏洩などの被害がニュースで取り沙汰されています。ログイン情報が盗まれ不正アクセスされてしまうと、個人情報や機密情報などの保存データの流出、ホームページの改ざん、サーバのシステム障害などさまざまなリスクが高まります。

不正アクセスされてしまうのは、IDやパスワードを使いまわしたり、単純で特定が容易なものを設定してしまっているのも原因の1つです。経済産業省では、こうしたサイバー攻撃による不正アクセス防止のための注意喚起を行いました。これを受け、経済産業省を含む、金融庁、総務省、厚生労働省、国土交通省、警察庁、内閣官房内閣サイバーセキュリティセンターが連名で「多要素認証の利用」をリスク低減のための措置として、企業への導入を推奨しています。

さまざまな種類がある多要素認証の方法からSMSが選ばれる理由は、ユーザーの利便性とコスト面です。前述したように、SMS認証ではユーザーが所持する携帯電話番号宛にピンポイントで認証コードやショートコードを送信できます。

万が一、ログイン情報が第三者に知られていたとしても、本人に直接コードなどを知らせることができるので、不正アクセスのリスクを低減できるのです。ユーザーは、スマートフォンや携帯電話さえ紛失していなければ、高い確率で不正アクセスを防げます。また、SMSはデフォルトでインストールされたアプリなので、ユーザーに対して新たにアプリのインストールや設定を促す必要がありません。SMS送信には料金がかかりますが、新たにシステムを開発する必要もないので、コストを抑えることもできます。

関連記事:SMS認証とは?導入の必要性と選び方、活用事例を解説

本人認証にSMSが選ばれる理由

本人認証の手段として、SMSが多くの企業に選ばれているのには複数の理由があります。ここでは、SMS認証が本人認証に適している主な理由について解説します。

携帯電話の普及率の高さ

SMS認証が広く採用されている理由の1つとして、携帯電話の普及率が高い点が挙げられます。SMSは、スマートフォンだけでなく、ガラケーなどほとんどの携帯電話に標準装備されているため、誰でも簡単に受信可能です。

総務省の「令和6年版情報通信白書」によると、2023年の世帯保有率はスマートフォンで90.6%、モバイル端末全体では97.4%と非常に高い数値を示しています。

本人認証の手段に、複雑な方法や利用できないユーザーが多い手段を選んだ場合、ユーザー離れや機会損失につながります。その点、SMSは多くのユーザーに対応できる可能性が高いといえるでしょう。

本人に届く確率の高さ

SMSは本人に届く確率が高く、本人認証の手段として適しています。携帯電話番号は、キャリアの審査を経て発行されるため、他人と重複することがありません。そのため、SMSを使うことで確実に本人がメッセージを受信し、本人認証をすみやかに完了することができます。

また、携帯電話番号はメールアドレスのように簡単に変更できない上、MNP(携帯電話番号ポータビリティ)の浸透により機種変更後も番号を引き継ぐ人が増えている点も到達率を高めている要因です。実際にSMSの到達率はかなり高く、企業によっては90%以上の実績を持つ場合もあります。確実に本人へ届ける必要のある本人認証において、SMSは有利な手段といえます。

開封率の高さ

SMSは、メールに比べて開封率が高い傾向があります。SMSを受信すると、ホーム画面に通知が表示されるよう設定されています。また、メールのように迷惑メールに振り分けられる可能性も少ないため、ユーザーが気づきやすい傾向があります。

加えて、SMSは携帯電話に標準装備されており、アプリのインストールや初期設定は不要なため、開封や操作に対するユーザーの抵抗や負担が少ない点も特徴です。

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本人認証にSMSを活用する際の注意点

SMS認証は、手軽で高精度な本人確認手段ですが、すべてのユーザーが利用できるわけではないため利用時には注意が必要です。例えば、格安SIMやSMS非対応の携帯電話では、メッセージを受信できない場合があります。

そのため、代替手段としてIVRやメール認証の併用も検討する必要があるでしょう。また、端末を紛失した場合は認証ができなくなるリスクがある点にも注意が必要です。

さらに、悪意あるアプリに気づかずダウンロードしてしまい、SMSを盗聴されてしまう「SMSインターセプト」や、SIMの電話番号を乗っ取る「SIMスワップ」といった不正アクセスの可能性も考えられます。より強固なセキュリティを確保するためには、ID・パスワードとの二段階認証が効果的です。

SMSによる本人認証の仕組み|ユーザー側と企業側それぞれで解説

ここでは、SMS認証はどのような仕組みなのか、ユーザー側と企業側それぞれの流れを解説します。

ユーザー側の流れ

ユーザー側の流れは「サービスのログイン画面でIDとパスワードを入力」「2段階認証画面で携帯電話番号の入力」「4桁か6桁の認証コードを受信」「受信した認証コードをログイン画面で入力」となり、コードが正しければログイン可能です。一般的に、ユーザーが電話番号を入力し送信したと同時に認証コードの送信が行われます。

企業側の流れ

企業側の流れは、SNS送信サービスを利用しているケースで解説します。流れは「ユーザーからSMS認証の要求を受ける」「SMS認証サービスにAPI経由で認証コードの送信を要求する」「ユーザーに認証コードが送信される」「該当サービスで認証コードが入力される」「SMS認証サービスからAPI経由で送達結果が通知される」となり、正しい認証コードが確認されれば認証完了です。

SMS認証を必要とするサービスとは?導入理由も解説

ここでは、SMS認証がどのようなサービスで必要とされているのか、種類と導入理由を解説します。

LINEやX(旧Twitter)などのSNS|個人を特定するため

LINEやX(旧Twitter)、InstagramなどでSMS認証が必要となっています。その理由は、個人を特定するためです。SNSではアカウントの乗っ取りや不正アクセスによって、なりすましで虚偽情報を発信されたり、詐欺に利用されたりするリスクがあります。そのため、SMS認証によりセキュリティを強化して、ユーザーが安心して利用できる環境づくりがされているのです。

銀行などの金融機関|金銭を直接やり取りするため

銀行などの金融機関でも、SMS認証が採用されています。銀行などは、金銭を直接やり取りするサービスを扱っている機関です。第三者が口座情報と暗証番号を入手してしまうと、不正出金などのリスクが高くなります。SMS認証を導入していれば、個人を確認したうえでのサービス提供が可能です。第三者が暗証番号を不正に入手したとしても、それだけでは金銭のやり取りはできません。

Yahoo! JAPAN IDやメルカリ|金銭を間接的にやり取りするため

Yahoo! JAPAN IDやメルカリなども、SMS認証が導入されているサービスです。これらサービスのアカウントが乗っ取られ不正アクセスされてしまうと、さまざまなリスクが伴います。Yahoo! JAPAN IDは、ショッピングやオークションサービス、有料サービスへの登録などが可能です。メルカリでも、不正に購入されたり出金されたりする被害につながります。どちらのサービスも、クレジットカードの登録ができるので、被害が大きくなる可能性もあるでしょう。SMS認証により不正ログインできなければ、これらの被害を未然に防ぐことができるのです。

ゲームアプリ|複数登録を避けるなど

ゲームアプリでも、SMS認証が導入されているケースがあります。1人のユーザーによる複数アカウント登録を避けられることや、他のユーザーが不正アクセスするのを防ぐことが可能です。1人が複数アカウントに登録できてしまうとポイントやアイテムなどの不正取得につながり、不正アクセスでアカウントが乗っ取られると課金による金銭的な被害につながってしまいます。SMS認証なら、1つのスマートフォンに1つのアカウントしか登録できなくなり、さらに持ち主しかアクセスできない環境をつくることができるので、不正アクセスを防げるのです。

SMS認証コードが届かない原因|解決方法は?

SMS認証を導入するとユーザーから「認証コードが届かない」という問い合わせを受けるケースもあります。ここでは、認証コードが届かない具体的な原因と、解決方法などを紹介しましょう。

認証コードが届かない場合の考えられる原因

認証コードが届かない原因として考えられるのは「ユーザーが圏外エリアにいる」「機内モードにしている」「SMSや着信を拒否設定している」「電話番号を間違えている」「そもそもSMSが利用できない」など受信側の問題が考えられます。

一方でキャリアやSMS認証サービス側に障害が起こっている場合も想定されます。

認証コードが届かないときの解決方法

認証コードを送信する企業側は、ユーザーが問題なく受信できるように促せる環境づくりが重要です。コードが届かない原因や問題を解決する方法をユーザーに案内できなければ、サービスを利用してもらうチャンスを逃してしまいます。SMS認証を導入するなら「よくある質問」などでSMS認証コードが届かない原因と解決方法を紹介したり、問い合わせに対しスムーズな案内ができるようにしたりするなどの準備も必要です。受信するユーザー側は、そもそもSMS機能のついたプランに加入しているのかを調べたうえで、各種の受信拒否設定の確認をしてみてください。

関連記事:SMSの認証コードが届かないのはなぜ?原因と対策を解説

SMS認証を活用した本人認証の事例

ここからは、SMS認証による本人認証を導入した企業の事例を紹介します。自社におけるSMS認証の導入に必要なSMS認証サービスの利用についても、あわせて参考にしてみてください。

株式会社JVCケンウッド

株式会社JVCケンウッドが運営するクラウド型タクシー配車システム「CABmee」では、アプリ利用時にSMSを使った本人認証を導入しています。しかし、以前利用していたSMS認証サービスは、海外の基地局から送信されるシステムのため、国内でSMSが遮断されるケースが多発し、ユーザーから「認証SMSが届かない」という問い合わせが相次ぎました。そのため、オペレーター対応の人的コストが発生する以外にも、配車業務にも支障が出ていました。

国内送信によるSMSの安定配信を実現すべく、国内直収のSMS認証サービス「NTT CPaaS」の導入を決定。導入後は、SMS未達の問い合わせは解消され、トラブル対応や顧客応対の人的コストを削減することに成功しています。

日本住宅ローン株式会社

日本住宅ローン株式会社では、住宅ローンに関する手続きを一括管理するアプリを提供しており、ログイン情報をSMSで送信していました。ただ、SMSの未達が多発し、問い合わせが月に数十件も寄せられる状態でした。また、SMSの到達状況を確認する機能がなかったため、原因がわからず、オペレーターや営業担当者の負担も大きくなっていました。

顧客体験や業務効率への悪影響を防ぐために、高い到達率や操作性に定評があり、到達・未達の確認がリアルタイムできる「空電プッシュ」への切り替えを決定。導入後は、SMSの未達による問い合わせがほぼゼロまで削減されました。また、メッセージの到達状況や未達の理由を即時に確認でき、問い合わせ対応のスピードと品質も向上しています。

SMS認証サービスの選び方!4つのポイント

SMS認証を導入する場合、SMS認証サービスを利用するのが一般的です。SMS認証サービスの選び方としてポイントになるのは「国内直収接続」「API連携」「送信処理能力」「セキュリティとサポート体制」の4つです。ここでは、それぞれのポイントについて解説します。

国内直収接続|安定通信で送信できる

SMS認証サービスは、国内直収接続を選ぶのがポイントです。SMS認証サービスには、国内の携帯キャリアと直接接続する安定通信が可能な「国内直収接続」と、海外の回線を経由して日本の携帯電話に送信する「国際網接続」があります。国際網接続の場合、ユーザー側で海外からの受信を拒否している可能性があるので、国内ユーザーが中心のサービスなら国内直収接続は必須です。

APIの連携|安全に利用できる

自社が展開するサイトやアプリ、システムなどと、APIでSMS認証を連携できるサービスを選ぶのもポイントです。APIなら、スムーズに自社サービスにSMS認証を導入することができます。

送信処理能力|大規模案件でもスムーズな送信が可能

送信処理能力もSMS認証サービスを選ぶポイントです。送信処理能力が高ければ、短時間で大量の送信ができるので、大規模案件でもスムーズに対応できます。

また、到達率も重要です。到達率が低ければ、それだけサービスの提供機会を逃してしまうことになります。

セキュリティやサポート体制|金融機関に対応できるセキュリティチェック基準

SMS認証サービスは、セキュリティやサポート体制で選ぶのもポイントです。例えば、金融機関などのコンピュータシステムの監査基準にも準拠するサービスを選べば、高いセキュリティを備えられます。また、SMS認証はいつトラブルが起きるかわかりません。24時間365日サポートが受けられるサービスを選ぶのもポイントです。

加えて、対応キャリアの種類や遅延対策、操作性なども重要です。特に法人利用においては、通信遅延のリスク回避やシステム連携のしやすさも使い勝手に直結するため、無料トライアルやデモを活用して試してみても良いでしょう。

関連記事:SMS認証サービスの選び方・比較のポイントと活用事例を解説

SMS認証サービスの導入方法|運用開始までの具体的な流れ

まず、自社のシステムとAPI連携できるサービスを選びましょう。前述したように、API連携できるサービスなら、スムーズに自社のサイトやアプリなどがSMS確認コードを送信できる環境をつくれます。次に、SMS認証サービスに自社仕様のSMS送信を指示するための、機能開発と実装が必要です。難しく感じますが、サンプルや仕様書が準備されているので、専門的な知識がなくても開発や実装はスムーズに進められます。最後に、SMS認証サービスと自社のサービスが連携して認証コードが送信できているか、遅延なく送ることができているかなどテストを行い、問題なければ運用開始です。

SMS認証を導入しセキュリティ強化を進めましょう!

SMS認証は、サイバーセキュリティ強化が目的の多要素認証の1つです。IDとパスワードだけのセキュリティでは、不正アクセスを防ぎきれません。SMS認証なら自社のサイトやアプリの安全性が高まるので、ユーザーにとっても安心して利用できる環境をつくれます。

SMS認証の導入方法に悩んでいるなら、まずは NTTグループの「SMS認証サービス」の利用をご検討ください。認証コード(ワンタイムパスワード)の生成、照合など 認証API機能を無料提供。99%超の到達率で認証コードを確実に届けます。SMS認証を支える様々な機能を一括で導入でき、工数の大幅削減が可能です。

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