継続的顧客管理は、銀行口座の不正利用を防止するために金融機関に求められている施策です。国際的な金融犯罪の防止に向けて、早急な実行が必要な継続的顧客管理を効率的かつ適切に実施するためには、適切な連絡手段を選ぶ必要があります。

本記事では、継続的顧客管理の概要や急務とされている背景、基本的な実施の流れや金融機関が抱える課題などについて解説します。金融犯罪防止の重要性を踏まえ、継続的顧客管理の解決に役立つSMSの活用についても紹介します。

この記事の内容
  • 継続的顧客管理とは、金融機関が顧客の本人確認を定期的に実施し、なりすましや架空名義による不正利用を防止する対策のこと
  • マネーローンダリングやテロ資金供与といった国際的な金融犯罪の防止のために、新規口座開設後も継続的な本人確認の必要性が高まっている
  • 継続的顧客管理は通常、対象となる顧客に対して質問票を送付し、回収して内容を確認、審査するという一連の流れが発生する
  • 継続的顧客管理の実施にあたって、顧客とのやり取りや回答内容のデータ化といった業務の負担、郵送料や人件費のコスト負担など課題も多い
  • 継続的顧客管理を効率的に行うために、到達率や開封率が高いSMSの活用が有用であり、SMS送信サービスにより簡単に実施できる
無料資料ダウンロード

「業種別SMS活用術」「SMSのメリット」「導入事例集」

SMSが良くわかる3点セット
SMSのメリットから、業界別の活用方法、
導入事例まで人気資料をまとめてご紹介!

継続的顧客管理とは

継続的顧客管理とは、なりすましや架空名義による不正利用を防ぐため、金融機関が顧客の本人確認を定期的に行うことです。銀行口座の新規開設時には本人確認が必須ですが、継続的に本人確認を実施し、最新の顧客情報に更新することで、疑わしい取引を早期に発見できます。

この取り組みはアンチ・マネー・ローンダリング対策(AML)の一環であり、テロ資金の供与やマネーローンダリング(犯罪資金の出所や流れを隠すこと)を防止する上でも重要な対策です。

ダイレクトメールや電話など、確認方法は実施機関により異なります。最近では、金融機関のみならず、貴金属商や弁護士といった非金融業種でもマネーローンダリング対策の強化が求められています。

継続的顧客管理の必要性

継続的顧客管理は、金融庁が国を上げて重要視している施策であり、その背景には世界規模での金融犯罪防止に向けた取り組みがあります。FATF(Financial Action Task Force/金融対策タスクフォース)と呼ばれる国際組織は、国際的な問題であるマネーローンダリングやテロ資金供与の対策の世界基準を設けています。

FATFによる2021年の審査では、日本の金融機関における対策が不十分であるとして、「重点フォローアップ国」に指定されました。

この審査結果を受けて、金融庁は国内金融機関に対し、2024年春頃までに継続的顧客管理の徹底を求める指示を出しています。また、審査では宝石商や弁護士など金融以外の業種でも金融犯罪対策に不備があるとの指摘があり、業界を超えてAMLの一環である継続的顧客管理の強化が求められています。

継続的顧客管理の方法と流れ

実際に継続的顧客管理を実施する流れを見ていきましょう。ここでは、一般的な質問票を送付し、対象者に回答してもらうやり方について解説します。

質問票の送付と回収

まず、現在の顧客情報に変更がないか確認するための質問票を顧客へ送付します。該当する情報としては、個人の場合は氏名や住所、生年月日、職業など、法人は事業内容や株主情報などです。現在登録されている情報が正しいかどうかを質問票に記載し、返送するように依頼します。

送付する頻度は、一般的には取引における疑いの度合いやリスクを考慮して変えます。リスクが高いと思われる場合には年1回、中程度の場合は2年に1回、リスクが低い場合は3年に1回程度などと頻度を設定し、各タイミングで実施する場合もあります。

なお、質問票を受け取った顧客から「なぜ確認を行うのか」といった問い合わせが来ることもあります。その場合、継続的顧客管理の概要や目的について説明する顧客対応が発生します。

質問票の内容の入力と審査

顧客から返送されてきた回答済みの質問票を見ながら、回答内容を既存データと照合、審査します。質問票を回収するといっても、基本的には顧客からの返送を待つことになります。転居済みや倒産などで質問票が相手に届かなかった場合には、電話連絡や訪問といった対応も別途必要です。

変更点がある場合は、最新の情報に更新するのが一般的です。 ただし、万が一疑わしい取引が確認された場合は、さらに詳細な確認を行う必要があります。

例えば、国内取引が多いはずの法人が頻繁に海外送金を行っている、学生なのに多額の入出金の履歴がある、といったケースはリスクがあると判断されやすいでしょう。

とはいえ、すべての顧客や取引について、同程度の顧客管理やリスク低減措置を行うことは現実的とは言えません。リスクの高さや個人・法人などの条件に応じて、措置を変えるといった対応が有用です。

継続的顧客管理の課題点・よくある悩み

継続的顧客管理により、不正利用を未然に防ぐことにつながります。ただ、実際に行うとなると苦戦する金融機関も少なくありません。ここでは、継続的顧客管理の推進にあたり、よくある課題や悩みを紹介します。

質問票の送付やデータ化に時間がかかる

継続的顧客管理に使用する質問票の送付や回収後のデータ化、分析作業の時間や手間が負担となる可能性があります。紙の質問票を用いる場合、内容を作成し、顧客に送付する、そして返送されたものを回収する、というすべての工程には時間がかかります。

また、送付する顧客が多いとそれだけ扱う顧客情報が膨大になるため、紙の質問票に書かれた情報のデータ化も大変になります。また、データ内容の相違確認を行った後、変更点の更新やデータ管理も必要となるため、迅速な対応は難しくなるでしょう。

日常業務とは別の作業が多く発生するというイメージが定着している企業もある中で、いかに作業を効率化できるかは大きなポイントです。

顧客とのやり取りに時間がかかる

継続的顧客管理では、顧客とのやり取りに時間や手間を要します。継続的顧客管理で用いられる連絡手段には、郵送の他にもメールやSMS、電話などがあります。紙の質問票が返送されない場合、返送に問題があったのか、そもそも相手に届いていないのか、といった顧客側の進捗がわからず、確認連絡が必要になります。

また、顧客の状況や都合に合わせて臨機応変に手段を切り替えるケースも見られますが、対応業務が負担になることも珍しくありません。大手であればコールセンター設備は整備されていますが、中小機関では作業量が増えると社内リソースが圧迫されやすいでしょう。

郵送料や人件費などコストがかかる

質問票の郵送費用や対応するスタッフの人件費などのコストも見逃せません。質問票はそれぞれの機関が独自で作成するのが一般的で、デザイン制作や書面作成、印刷代、郵送料が発生します。顧客数が多ければそれだけ郵送費用も跳ね上がります。

また、確認のための通話料金や、対応マニュアル作成、業務フローの構築、回収データの整理、管理作業などを行うスタッフの人件費も増加します。

ノウハウが不足している

継続的顧客管理の経験が浅い金融機関では、ノウハウが不足しているために、どのようにして業務効率化したらいいかわからないという課題もあります。膨大な顧客情報を定期的に確認するために、スムーズな運用フローの構築は不可欠です。

しかし、経験がないと実際の運用に役立つノウハウの蓄積がなく、導入段階でスムーズに進まない可能性もあります。

継続的顧客管理で活用されるeKYCとは?

継続的顧客管理を効率的に実施するために有用な手段として「eKYC」があります。eKYC(electronic Know Your Customer/電子本人確認)とは、従来は金融機関の窓口や郵送で行っていた本人確認をオンラインで完結できる手法です。

顧客はスマホやパソコンのカメラを使って必要書類をアップロードするだけで、本人確認ができます。顧客側はスマホ1つで手続きが完結できるため、返送の手間を省けます。また、金融機関側は、作業コストや業務負担の削減といったメリットが期待できます。

継続的顧客管理においてSMSを活用した事例

継続的顧客管理にSMSを活用した事例として、PayPay銀行株式会社様の事例を紹介します。

ネット専業銀行のPayPay銀行は、マネーローンダリング対策の一環である継続的顧客管理への対応が急務でした。顧客登録情報の最新化に取り組むにあたって、従来の郵送やメールのアプローチでは住所やメールアドレスの変更によりリーチしきれないという課題があり、柔軟な料金体系で使いやすいSMS送信サービス「空電プッシュ」の導入に至りました。

運用開始後には、メールで回答してもらえなかったお客様へのアプローチが実現しています。

空電プッシュで継続的顧客管理を効率化

継続的顧客管理により、登録の顧客情報に変更がないか定期的に確認することで、銀行口座の不正利用を防ぐことが可能です。国際的な金融犯罪の防止が世界的な急務となっている今、国内の金融機関でも対応を迫られています。

質問票の送付や回収、データ入力や情報確認といった業務負担を解消し、効率的な対応を実現するために、適切なシステムの導入が有用です。

NTTコム オンラインが提供する「空電プッシュ」は、国内最大規模の送信性能と高いセキュリティ性を持つSMS送信サービスです。金融機関や自治体での導入実績が豊富で、携帯電話の利用履歴判定機能や既存システムとのAPI連携などの機能を搭載しています。ご要望に合わせたご提案も可能ですので、お気軽にお問い合わせください。