富士市は、南に駿河湾、北には富士山を臨む静岡県東部の中核都市。およそ25万人の市民が暮らしています。コロナワクチン接種が本格的に始まったことを機に、接種予約日のリマインドや接種日時に変更があった際の連絡目的で導入を決めたのが「空電プッシュ」です。保健部健康政策課の加藤氏に、導入の経緯や実際の運用方法についてお話を伺いました。
はじめに、富士市保健部健康政策課で行われているコロナワクチン接種関連の業務についてお聞かせください。
加藤氏:接種予約の枠の確保と、予約方法を市民の皆さんに周知するのが主な業務です。例えば、予約開始日の周知やコールセンターやオンラインでの予約方法など、コロナワクチン接種に関するさまざまな情報を富士市の公式サイトやLINE、プレスリリースなどで提供しています。
「空電プッシュ」は、どのようなきっかけで導入されたのでしょうか?
加藤氏:他の自治体と同じように富士市でもコロナワクチンの接種は、高齢者から順に進めていました。当初は、予約された方宛に接種予約日の前の週の月曜日に、予約日時や接種会場を明記したハガキをお送りしていました。しかし、段々と接種できる年代が若くなっていき、携帯電話やPCを使ってオンライン予約ができる世代に移ってきたことを機にSMSの導入を検討しはじめました。ハガキは、送るだけで1通63円かかります。それをSMS送信で代用できないかと考えたのがきっかけです。予約時の連絡先電話番号に、9割の方が携帯電話番号を登録されていたことも決め手になりました。また、ハガキでは接種日直前の緊急連絡対応ができないことも課題だったのですが、SMS送信であれば当日のご連絡も可能になります。この点も導入の後押しになりました。
コロナワクチン接種開始後に導入をご検討されたのですね。実際の運用はいつ頃から開始されたのでしょうか?
加藤氏:2021年の7月26日から運用を開始しました。まずは、1回目の接種予約日のリマインドとして、予約日の2日前にSMSでメッセージを送信しています。ちょうど60代以上の方の接種が終了し、59歳の方の予約を開始したタイミングでSMS送信に切り替えました。
SMSでは、どのような内容のメッセージをお送りしているのですか?
加藤氏:「あなたのコロナワクチン接種は◯月◯日の◯時です。接種場所は◯◯です。」という文面で、メッセージをお送りしています。文字数の制限があるので、持ち物や注意点などについては、富士市の公式サイトのURLを記載し、ご確認いただくようにしました。
同時に、「このメッセージはワクチン接種の1回目の予約をされた方にお送りしています」というメッセージも別送しています。メッセージを受け取る側にとっては、知らない差出人からSMSが届くことになりますので、どうしても市役所へのお問い合わせが増えてしまいます。SMSにおける架空請求や詐欺トラブルなども多いので当然だと思いますが、同時に2通のメッセージをお送りすることで、市民の皆さんに安心していただけるように工夫しています。
接種予約者にはどのように送信されていたのでしょうか?
加藤氏:接種予約システムから、氏名、予約日時、予約会場の一覧のCSVファイルを作成し、「空電プッシュ」にアップロードすると、先ほどお話しした送信メッセージの定型文に個別の情報を差し込んで送信できますので、この機能を利用して送信しています。
予約システムの構築や管理、コールセンターの運営などは、外部業者に委託していますが、接種日リマインドのSMS送信は市の職員が行っています。
接種予約日のリマインド以外でも「空電プッシュ」を活用されているのですか?
「空電プッシュ」運用開始後の8月に大雨で集団接種会場の駐車場が冠水してしまったことがありました。車が駐車できる状況ではなかったので、ワクチン接種の中止をご連絡しなければなりません。その会場で予約していた方は、最大1,000人ほどいましたので、「空電プッシュ」を導入していて、本当に良かったと思いましたね。導入していなければ、これだけの人数にスピーディに連絡をするのは難しかったと思います。
「空電プッシュ」を導入によるメリットを教えてください。
加藤氏:一番のメリットは、コスト面ですね。富士市の接種対象者は約23万人。そのうちの7割程度が接種すると想定していたのですが、それでも16万人です。その全てにハガキを送るとなると、単純に計算しても1,000万円以上かかります。「空電プッシュ」を導入すると、ハガキと比較して安価にメッセージを送ることができます。現時点(2021年11月取材時)で対象者の85%が接種を完了していますので、コスト面のメリットは想定以上ですね。
さらに、職員の負担軽減という面でも導入のメリットは大きかったです。ハガキの場合は、市役所内で、職員が文面を差し込み印刷し、郵送していたのですが、「空電プッシュ」であれば1日分のリマインドを送るのに10分もかかりません。手の空いた時間に送信準備をしておき、予約送信機能で日時指定して送信できる点も助かりました。SMS送信件数は、8月は26,000件、9月は46,700件、10月は45,200件と導入後にピークを迎えましたが、スムーズに送信できました。
また、予約日時や接種会場がわからなくなってしまったというお問い合わせが減ったこともメリットですね。予約日の数日前に予約日時を変更された方に対しても、SMSなら直前までの変更内容を反映したお知らせが可能です。ハガキの場合は、予約日の前の週にお送りしていたので、変更前の日時をお知らせしてしまう場合もありました。
3回目の接種も始まりますが、「空電プッシュ」を今後、どのように活用していきたいと考えていますか?
3回目の接種は、再び高齢の方から始まります。1回目では、ハガキをお送りしている層になりますので、携帯電話を普段から使用していない方もいらっしゃいます。その点で課題はありますが、3回目接種ではSMSでの接種日リマインドを実施する予定です。大事なことは、迷惑メールや詐欺メールなどと誤解されないように、まずは高齢者の方にもSMSでメッセージが届くということを事前にしっかり周知していくことだと思っています。そして、先ほどお話ししたことの繰り返しになりますが、リマインドメールは同時に2通お送りして対策をしていきたいですね。
また、3回目の接種が始まると同時に、5〜11歳のワクチン接種が開始されるという話もあります。以前、接種予約者の登録電話番号が、ご本人のものではなかったということがありまして、年齢層が低い場合には、同様のことが起こると考えられます。SMSを送信することで、お問い合わせが増えてしまっては本末転倒ですので、やはり周知方法を考えていかなければならないと思っています。
ワクチン接種以外では、健康政策課ですので、年代別の健康診断、BCGの接種、歯科検診など、お知らせをしていく場面が多々あります。そういった場面でも活用することを検討していきたいと考えています。
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