香川県の県庁所在地であり、四国の中枢管理都市でもある高松市。海・山・川などの恵まれた自然と都市が調和する同市の保健所で、新型コロナウイルス陽性者への連絡に活用されているのが「空電プッシュ for LGWAN」です。センシティブな個人情報を扱う保健所に導入された経緯や、「第6波」「第7波」を経ての活用方法、導入後の成果について保健予防課感染症係に所属する高橋氏に伺いました。
まずは高松市保健所で高橋様が所属する部署の業務内容と役割について教えてください。
高橋氏:私は新型コロナウイルス対策を担当する感染症係に所属しています。メインの業務は陽性となった方々への対応。ほかに市役所内の関係各所との調整や、感染者数がピークの時には全庁から応援に来てくださった職員への仕事の割り振り・指示などに加え、各セクションの連携対応などを行っていました。外部から派遣された方々や応援で来てくださった別部署の職員を合わせると、現在でも40人ほどが関わっている部署です。
空電プッシュ導入のきっかけはどのようなものだったのでしょうか?
高橋氏:きっかけとしては、やはり感染拡大に伴う業務負荷の増加が一番大きかったですね。陽性者が発生すると、まずは医療機関から保健所に連絡があり、それを受けて保健所から患者さんに現在の症状や体調、世帯状況や陽性者との接触歴、県外滞在歴などの行動履歴といった内容の聞き取り調査(疫学調査)を行います。現在ではだいぶ簡略化されていますが、空電プッシュを導入した第6波時点では、陽性者全員に対して多くの項目の調査を行っていました。
当時は、陽性者への最初の連絡となる“ファーストタッチ”や、療養終了にあたっての連絡・案内を電話でするのが基本でした。ところが、第6波が到来した2022年の2月、3月頃には、それまで日に60人程度だった市内の新規感染者数があっという間に200人を超えてしまいました。毎日200人以上の感染者が出て、10日間療養となると、単純計算で2000人以上の方が市内で療養されていることになります。その方々の健康観察・フォローもしながら、新規陽性者、療養解除予定者それぞれ200人以上にこれまでと同じ方法での連絡は到底できません。ファーストタッチですら翌日、翌々日にズレこむ状況となってしまったのです。
このような状況に対応するため、高松市では、聞き取り調査にあたって事前に情報を入力してもらうためのオンラインフォームを構築するとともに、療養終了に際しての体調確認と終了後の生活に関する情報提供の仕組みの見直しを始めました。医療機関からの発生届には、陽性者の連絡先として携帯電話番号が記載されていることがほとんどであるため、SMSを活用する案が挙がってきました。まずは陽性者への連絡専用の携帯端末から一人一人SMSでお送りする方法を取っていたのですが、それも人海戦術では、すぐに限界がきてしまいました。
導入へ至る上で、一番のポイントとなった点を教えてください。
高橋氏:陽性者への連絡方法として、当初はEメールも検討したのですが、この場合は、メールアドレスの収集が難しい。そこで、情報システムの部署と一緒にSMSを活用する手段を探したところ、一斉にSMSを送信するシステムがあること、また、インターネット上で使えるものとLGWAN上で使えるものの2種類があることがわかりました。今回の用途を考えると、陽性者の個人情報という非常にセンシティブな情報を扱います。よりセキュリティに気を付けなければならないため、LGWAN上で利用できるサービスに絞りました。
最終的な選定ポイントはやはりセキュリティの強固さ。営業の方が説明時にお話しされていた「すべてのサーバーが国内で完結している」という点がポイントでした。少し前に、あるセキュリティ問題が多方面に大きな影響を及ぼし、当市の情報システム部署も気にしていました。海外サーバーを使っていた企業で起きていた問題だったため、今回の選定では一番安全性の高いツールを選んだというのが大きな理由です。
加えて、SMSを送信する管理画面のUIがわかりやすい点も大事な要素でした。導入時点で、今後多くの方にファーストタッチをしていくだろう状況が見えていました。それに伴ってツールを利用する職員も増えていくでしょうし、新しく使うシステムで手間がかかる操作や難しい操作があると、うまく使えない職員が出てきてしまう可能性も。そうした状況を鑑みると、インターフェースの分かりやすさは重要でした。
現在の空電プッシュの具体的な活用方法について教えてください。
高橋氏:感染拡大のピーク時、高松市では一日1000人以上の陽性者が出ていました。そのため当初はファーストタッチや療養を終える方への体調の確認に活用していたのですが、保健所への連絡方法の案内や、制度変更の周知、個別対応が必要な際の連絡などにおいても活用の幅を広げていきました。
導入後から10月現在までに制度が何度か変わり、療養期間や濃厚接触者の待機期間にも変更がありました。その影響を受ける方に対して制度変更のご案内をお送りするのにも空電プッシュを使いました。また、選挙期間や台風が来たとき等に、ピンポイントで情報をお伝えしなくてはならない場合もあります。選挙であれば療養期間中の投票方法、台風であれば陽性者用の避難場所などの案内が必要でしたので、とても助かりました。
アカウントは、メインで利用する30~40人分を用意しています。送信先の設定は、保健所として陽性者の情報を集約するデータベースを作成しているため、そこからCSV形式でエクスポートして読み込ませる形で運用していました。場合によっては個別で携帯電話番号を打ち込んでSMSを送信することもありましたが、いずれにしても職員からの質問や相談はほとんどなく、本当に分かりやすいUIという印象です。また、導入当初、操作説明会を開いていただき、陽性者の対応業務をメインで行う職員に聞いてもらえたのも、システムをスムーズに使う上での一助になったと思います。
空電プッシュを導入したことでの効果やメリットについて教えてください。
高橋氏:送信相手の連絡先をCSVで読み込み一斉送信をする場合は、約500~600人に送ってもおおよそ20~30分で作業が終了します。導入前の、朝から晩までひたすら電話連絡だけを繰り返さないと追いつかない状態から、1時間もかからずにファーストタッチが完了し、必要な情報を、必要な時に、必要な方々に提供できるようになりました。そこに人員をかけなくてよくなった分、電話対応が必要な患者さんに連絡して不安を解消したり、療養先を手配したりといった手厚いフォローができるようになっています。
また、以前の携帯端末から一人ずつSMSをお送りする手法の場合、患者さん側からすると、突然見ず知らずの番号からSMSが届くことになりますが、その点空電プッシュですと、保健所の電話番号を発信元番号として送ることができるので、受け取る市民の方の安心感も増しているのではないかと思われます。そのおかげか、用意した入力フォームの回答率も、以前は5割程度だったのが、6~7割程度まで伸びていきました。
第7波の際は、選挙対応の連絡が重なったこともあり、多い時で1日に3000件超のSMSを送っていました。空電プッシュがなかったら、業務が回らず、陽性者に連絡も取れないような状態になっていたかと思うと正直ぞっとします。
今後の空電プッシュの活用方法や、追加されると良いと思われる機能などがあれば教えてください。
高橋氏:コロナ禍が落ち着いたとしても、次の感染症が発生する可能性は常にあります。そのときはまた同じような体制を組み、対応していかなくてはいけなくなります。今回、市民の皆さまへの連絡にSMSが有効であることが分かったので、コンタクトにおける一つの手段として今後の軸にできるのではないかと考えております。
保健所や市役所では提出書類の中に携帯電話番号を書いていただく機会が多くあります。それを上手に活用し、例えば予防接種や、お子様もしくは高齢の方の健診案内などの業務においても、活用の可能性を感じています。
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