反応率や納税額の改善に加えて、SMSが電話や
文書では得られなかった情報を得るきっかけにも

課題
  • 以前からSMS送信サービスは知っていたが、送信元電話番号が携帯電話番号になるため、なりすまし防止の対策が取れず、採用できなかった。
  • 納付が遅れた方に対して催告書を送付したりコールセンターから電話をかけても、開封してもらえなかったり、電話に出てもらえなかったりするケースが一定数あった。
成果
  • LGWAN回線を利用したSMS送信サービスであるため、安心であり、新たな設備の導入も不要で、スムーズに導入をすすめることができた。
  • これまでの手法ではコンタクトできなかった方に対しても、SMSなら反応してもらえるケースがあり、納付額も伸びるなど効果が現れている。

埼玉県南部、朝霞市、志木市、和光市と共に朝霞地区四市の一角をなす人口16万人超の市、新座市。市税の徴収率アップを課題とする同市納税課において、従来のツールではなかなか連絡が取れにくかった市民への画期的な催告手法として導入されたのが「空電プッシュ for LGWAN」でした。ここではその経緯と導入後の活用ぶりについて、沼倉氏、髙橋氏にうかがいました。

新座市議会からも「空電プッシュ for LGWAN」を推す声が

財政部 納税課 徴収係長
沼倉 伸哉 氏

「空電プッシュ for LGWAN」導入前の納税に関する課題はどのようなものでしたか。

沼倉氏:私どもは納税課徴収係という名前の通り、市税の徴収業務に携わっています。また国民健康保険税も、新座市の場合は納税課で徴収しています。ただ、納税課というよりも新座市全体の課題として、「徴収率が埼玉県下でも下位に低迷している」という現状がありまして、これを改善する施策を求めて日々検討を重ねておりました

「空電プッシュ for LGWAN」については、2018年6月頃に、パンフレットを頂戴しまして、これは効果が見込めそうだと検討を始めたのですが、時期を同じくして新座市議会からも、6月議会で「SMSの送信ツールを利用してはどうか」というご意見がありました。この時は、確か市議会議員からも御社に直接お問い合わせがあったと聞いています。

はい。実は、ある市議会議員様に2018年5月の「自治体総合フェア」でNTTコム オンラインのブースへお越しいただき、それがきっかけで、議会でもご提案いただきました。そういった後押しもあったかとは存じますが、最終的に「空電プッシュ for LGWAN」を導入された決め手についてお聞かせいただけますか。

沼倉氏:やはりLGWAN回線を利用していることですね。行政機関としては、それが一番安心です。

またそれでいて、LGWAN端末だけあれば新たな設備の導入は必要ありませんでしたので導入へのハードルも低かったのです。操作方法など、こういったシステムに疎い私でも抵抗なく「大丈夫だろう」と思えました。先に導入されていた他の自治体の事例から、少なからず効果があるという見込みもついていました。

以前から他社が提供するSMS送信サービスの存在は見聞きしていたものの、「SMSの送信元電話番号が携帯電話番号になる」というので、自治体でのSMS利用において重要ななりすまし防止の対策が取れないことから、検討するに至りませんでした。「市民個人の連絡先へ情報を発信する」となりますと、個人情報保護の観点から慎重な検討が必要となるのですが、今回は「LGWAN回線を使用する」ということで、かなりスムーズに進めることができましたね。

ちなみに運用開始にあたっては「SMSを受信された方が特殊詐欺と誤認してしまうのではないか」ということで、所轄の警察署や、詐欺被害などの相談を受けている「消費生活センター」にも事前に情報提供をしました。具体的には、SMSの送信元電話番号、実際に送信する文面などです。特に昨今はSMSを悪用したフィッシング詐欺も多発しているので、不要な勘違いやトラブルを防ぐ意味でも、新座市がSMSを活用した取り組みを実施しているということを認知頂けるよう、事前対策をとりました。

既存のツールと組み合わせる運用で、よりSMSの効果を実感

財政部 納税課 徴収係
髙橋 大輔 氏

実際に「空電プッシュ for LGWAN」を導入されてみて、いかがでしたか。

髙橋氏:私が実際の端末操作を担当しているのですが、こちらで求めている機能、やりたいことを見やすい画面や簡単な操作で実行できるので、まさに「かゆい所に手が届く」というイメージです。一括送信や送信予約といった少々込み入った操作であっても、ほとんどマニュアルを読み込まずとも対応することができました。使い勝手のよさを実感しています。

具体的な運用内容について、教えていただけますか。

沼倉氏:市税の納付が遅れている方のうち、コールセンターからお電話しても連絡がつかなかった方を抽出して、SMSで再度ご連絡を差し上げています。また、文書の催告書をお送りしても特に反応がなかった方も抽出を行い、SMSで「文書をお送りしています」という内容を追送しています。従来は、文書をお送りした後にハガキで「文書をお送りしています」というお知らせを差し上げていたのですが、どちらも郵送ですので、別の方法をとった方がいいということになりました。

催告書到着後、特にこちらへ連絡がなくても納付される方もいらっしゃいますので、SMS送信まで一定期間を置くようにしています。具体的には、大体お電話や文書の発信から1週間後を目安に、そういった動向を確認してからSMSをお送りするようにしています。

お電話や文書との併用を基本になさっているのですね。

沼倉氏:はい。納付が遅れる方の多くは、いわゆる「うっかり忘れ」なのです。そういった状況に対して、初動として、催告書送付後のコールセンターからのお電話での呼びかけは一定の効果は見込めます。ただし、昨今見覚えのない電話番号からの着信には応答されない方もいらっしゃいまして、お電話では連絡が難しい方も一定数いらっしゃいます。また、催告書は自宅に到着しても、開封されて見られなければ主旨が伝わることがありません。同様に、文書も長期のご不在などでお手元に届かないケースがあります。それに比べてSMSは、いつも持ち歩いている携帯電話に届きますので、「市民に見て頂ける」「市民に伝えたいことが伝わる」ことに長けたコミュニケーションツールとして、効果を挙げているのを実感しております。

例えば「現在すでに新座市内には居住していない」という方からも、「SMSを見た」とご連絡をいただきました。これまでの手法ではこういった方も一律に「文書を送付したが反応がない」ということにされていたわけですので、その情報を得られたことは大きいですね。

実際、お電話でコンタクトできなかった方に対してもSMSなら12.1%の反応率で、納付額は合計5,639,100円、催告書送付後のSMSでは反応率11%、納付額合計1,374,443円と、数字にも効果が現れてきています(R1.8~R2.1までの実績)。

素晴らしいですね。ちなみに、SMSの効果を実感された個別の事例などはありますか。

沼倉氏:はい。督促状が返戻された方の中で、SMS送信後に「現在すでに新座市内には居住していないので、督促状を受け取れなかった」というご連絡をいただいたケースがありました。これまでの手法ではこういった方も「督促状が返戻された」という事実しかわからなかったわけですので、SMSによって転居後でも連絡をとることができ、居住実態を確認できたのは大きいですね。

催告以外の業務にも「空電プッシュ for LGWAN」を利用されたそうですね。

沼倉氏:今年度の導入直後に、軽自動車税の口座振替を勧奨するキャンペーンに利用しています。短縮URL機能があったので、送信可能文字数が限られている中でも、市のホームページのURLを記載することができました。

使いこなすためにも「どのように運用するか」をしっかり見据えた導入計画を

導入後、業務効率化のためにシステムの改修をされたそうですね。

沼倉氏:SMSが着信した結果を、「空電プッシュ for LGWAN」から既存の滞納管理システムに一括入力できるように改修を施しました。SMS送信以外の業務でも「1件ずつ入力するのは効率的でない、一括入力機能が必要だ」という要望が出てきていましたので、これを機にということですね。

職員の負担を減らそうという取り組みもありましたし、そもそもの導入のきっかけであった徴収率改善の視点からも、徴収職員が入力業務に時間をとられることなく、滞納整理業務に専念できる環境を整えることは重要だと考えました。

「空電プッシュ for LGWAN」の利用を検討されている自治体へ、メッセージをいただけますか。

沼倉氏:そういった自治体から私たちに直接お問い合わせをいただくこともありまして、その際に必ずお伝えしているのが「『どのように運用するか』をしっかり考えておかないと、使いこなせないかもしれない」ということです。

例えば「誰が、どういった方を対象に、どのタイミングでSMSをお送りするのか」ということをあらかじめ考えておかないと、導入はしたものの宙に浮いてしまうこともあり得ます。新座市は幸い、コールセンターを庁内に確保できていますが、そういった環境がない自治体であれば、担当の職員がそれぞれ直接対象者を抽出して送信手配をするということも求められるでしょう。

我々もまだまだですので、これからもっと使いこなしていきたいですね。現在の運用方法ですと送信可能数にはまだ余裕があるので、どういった業務にSMSを活用できるか、他市の事例も参考にしながら検討していきたいです。

一つ課題を解決して終わるのではなく、さらなる取り組みに向かっていく、そのサポートを「空電プッシュ for LGWAN」が務められることはとても光栄です。本日はありがとうございました。

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