東京都の多摩地区南部に位置する狛江市。「世田谷区に隣接」「小田急小田原線が通っている」など都心に出やすい条件が整っており、ベッドタウンとしても知られています。そんな同市の納税課が、2022年1月、徴税業務に役立てるために導入したのが「空電プッシュ for LGWAN」です。税金の督促状や催告書を郵送した後に、空電プッシュで封書を郵送したことを伝えるSMSを送信し、封書の開封率や納税率のアップにつなげていると言います。同市納税課の名生氏、竹本氏に、導入の経緯や活用における工夫点などについてお聞きしました。
まずはおふたりの担当業務についてお聞かせください。
名生氏:私は狛江市の納税課納税係で徴税業務を担当しています。税金を滞納されている方に対して、督促状や催告書といった書類をお送りしたり、お電話をしたり、場合によってはご自宅にお伺いしたりとさまざまな形でアプローチしながら、税金の徴収につなげるというのが主な職務です。
竹本氏:同じく納税課納税係で徴税業務に従事しています。現在、納税係には、名生と私を含め8名の徴税吏員がおり、それぞれが担当地域の滞納者と直接交渉を行うスタイルで業務を行っています。ほかに事務を担当する職員が8名おり、合わせて16名で各種業務の対応をしています。
どのような課題があって、SMS送信サービスの導入を検討されたのでしょうか?
名生氏:空電プッシュを導入する前は、主に督促状や催告書の送付と電話で納税をお願いしていました。しかし郵送物の場合、そもそも見てくれない、開封してくれないことが多いという状況でした。どんなに目立つ封筒でお送りしても、役所からの郵送物だとわかった時点で放置されてしまうことが続いていました。お電話に関しても、出てくださらない方が多いですよね。こうしたことが続くと、訪問や、さらには財産の差し押さえなど強い手段を取らざるを得なくなってしまいます。
このような課題があり、以前から「強硬な手段に出る前になんとか納税につなげたい」、「既にやり尽くして頭打ちになっている郵送や電話だけでなく、新しい手段が必要なのではないか」と考えていました。
そんなとき、たまたま東京都が徴税業務にSMSを活用しているという話を聞きました。東京都の事例によって、SMS送信サービスがLGWAN上で使えるということを知り、すぐに興味を持ちました。行政の取り組みとしては目新しく、効果も見込め、また、安価に導入できる、すぐに運用を始められるところも魅力的でした。そこで、SMS送信サービスについて調べ始めたのです。
他社の類似サービスも検討されましたか? 空電プッシュに決定された理由はどのようなところにあったのでしょうか。
名生氏:空電プッシュを含め3社のサービスを比較検討しました。その中で空電プッシュは、「東京都での活用実績があり安心して導入できる」「携帯番号履歴判定機能(送信先携帯番号の契約者変更の可能性がある場合に自動的にSMS送信を止める機能)があり、誤送信のリスクが少ない」といった点があげられます。ほかに、狛江市役所の代表電話番号でSMSが送れるところも大きなポイントでした。他社のサービスの中にはSIMを装着してSMSを送信するという仕様のものもあり、発信者番号がSIMの番号になってしまうという課題があったのですが、そこを気にしなくていいというところにも惹かれたことを覚えています。
導入はどのような段取りで進めて行かれましたか? なにかご苦労されたことや工夫されたことがありましたらお教えください。
名生氏:導入を決めたあと、まず行ったのが、予算確保のための資料づくりです。上司を説得するため2か月かけて、多摩地区の25の自治体に「SMSによる催告を行っているか」「行っているとしたらどのような内容か」「効果はどうか」といったアンケートを実施しました。このアンケートで、「効果を実感している」「反応率も期待通りである」といった声が集まり、より説得力のある資料ができたと感じています。
また、上司へのプレゼンの際に、「送信数は1カ月1,000通までとする」「上限を決めることで月額料金を固定し、これ以上コストがかからないよう運用する」といった提案を盛り込み、予算が確保しやすい工夫も行いました。
いま振り返ると、この“提案”の部分が一番大変だったような気がしますが、苦労の甲斐あって無事に決裁がおり、そのあとは庁内手続きを経てスムーズに導入することができました。
具体的なご活用方法についてお聞かせください。
竹本氏:1カ月に1回、督促状や催告書をお送りし、その直後に、携帯番号が把握できている方に対して空電プッシュで「お手紙をお送りしましたので、開封してご確認ください」といった旨のSMSをお送りしています。
メッセージの内容は、督促状と催告書で少し変えています。催告書のほうがより強い通知になりますので、メッセージの冒頭に「重要」という文言を付けたり、少し重みのある言葉を選ぶなど、受け取った方に切迫度が伝わるよう、運用しながら調整していきました。
それから、当初は詳細情報を極力排除するような形でメッセージをつくっていたのですが、情報が少なすぎて、「これは何についてのSMSなのか」「いつ送られた郵送物の話なのか」といった問い合わせが来てしまう事態が発生したため、いつの納期限に対する督促・催告であるかの情報を入れるなどして、用件がわかりやすくなるような変更もしています。
名生氏:メッセージを送るタイミングについても、運用するなかで調整しました。当初は、督促状や催告書を郵送して少し経ってからSMSを送っていたのですが、そうすると「行き違いですでに納付をした方」から連絡がくることがある、ということがわかりまして。現在は郵送の直後にSMSを発信するという運用に落ち着いています。
実際に使ってみてどのようにお感じになりますか?率直なご感想についてお聞かせください。
竹本氏:空電プッシュの管理画面は、CSVをアップロードするだけですぐにSMSを送ることができ、とにかく簡単で便利だと感じています。システム上のトラブルやエラーが起きたことも一度もありませんし、ストレスなく、日常的に使えています。
効果についてはいかがでしょうか?
名生氏:SMSをお送りした方のうち、電話でご連絡をくださる方が約8%程度という数字が取れています。郵送や電話での反応率も10%程度なので、「郵送、電話と同程度の反応率」と言ってよいのではないでしょうか。当初の期待通りであり、悪くない数値であると捉えています。なお、この反応率は、あくまで「お電話で連絡をくださった方」の数値です。なかには特に電話などせずSMSに気づいてすぐ納付する、という方もいらっしゃると思いますので、実際の徴税効果はもっと高いのではないかと思います。
竹本氏:それから、督促状・催告書を発送した方の税金の納付率が前年比で約3%上がったという数字も出ています。SMS催告だけでなくいろいろな施策要素が絡み合った結果ではあると思うのですが、実感として、SMS催告の効果も高かったように感じています。
名生氏:実際に、郵送でも電話でも反応してくれなかった方が、「SMSが届いたから」と言って電話をくださり納付につながったことが何度もありました。郵送、電話だけでは届かなかった方に確実にリーチしていると思います。また、より多くの方に見ていただけるようになったことで「うっかり納付忘れ」の方が減って、徴収が早くなったという効果も感じています。徴収が早まることで、政策実行にも良い影響を与えていると考えています。
今後はどのように活用したいと考えていらっしゃいますか?
名生氏:今後も継続して反応率や納付率を追っていき、傾向などを分析して、よりよい運用を模索していきたいと思っています。並行して、例えば口座振替のご案内など、税に関するお知らせにも使えないだろうかと検討を進めているところです。
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