東京都のほぼ中央に位置し、約26万人が暮らす府中市。子育て支援に力を入れる同市は、妊娠中や出産後の母子のサポートを強化する一つの策として「空電プッシュ for LGWAN」を導入し、SMS送信による気軽かつ着眼率の高い情報発信を実現しました。ここでは、導入理由やその活用方法について、府中市子ども家庭支援課の大澤氏、石田氏にお話を伺いました。
はじめに、「空電プッシュ for LGWAN」を導入いただいた「子ども家庭支援課」の役割を教えていただけますか?
石田氏:子ども家庭支援課では、母子保健係と子ども家庭支援センターの連携により、妊娠中から出産後の子育て家庭までの母子を対象に包括的な支援を行っています。各自治体は母子保健法に基づき、母子の健康づくりの保持・増進のために必要な支援を行わなくてはなりません。府中市でもしっかりとした体制を整え、妊娠期から小学校入学前まで切れ目のない支援を実施しています。
母子支援の内容とは具体的にどのようなものでしょうか?
大澤氏:大きく分けて3つあり、1つは「妊娠中のケア」です。妊娠届を提出していただいた時に妊婦さんと面談を行い、お悩みや困りごとを伺ったり、必要なサービスの紹介をしています。特に出産や子育てに対する不安が強い方や疾患がある方の場合は、妊娠の初期から保健師がついて様々な支援をしていきます。
2つ目は「出産後の新生児訪問」です。赤ちゃんが生まれた後、妊娠届を提出していただいたときに母子健康手帳とともにお渡しした「出生通知票」のはがきを母子保健係に送付してもらいます。母子保健係ははがきを受け取ると、お母さんに電話をし、日程を調整してご自宅を訪問。赤ちゃんの体重測定をはじめ、育児に関するご相談をお受けしています。
3つ目は「乳幼児健康診断」です。母子保健法に基づき、府中市では3-4か月児健診、1歳6か月児健診、3歳児健診を実施しています。この時期に健診を受けることで保護者の方の育児の困りごとを把握するとともに「体重の増加が遅い」「言葉を話始めるのが遅い」といった子どもの発達や発育の状態を把握でき、必要な支援につなげることができます。
昨今のコロナ禍では妊娠・出産・育児において不安を抱える保護者が増えています。子ども家庭支援課では十分な感染症対策を行いながら、母子支援をさらに強化していきたいと考えています。
「空電プッシュ for LGWAN」を導入いただくきっかけとなった課題について教えていただけますか?
大澤氏:「妊娠中のケア」「出産後の新生児訪問」「乳幼児健康診断」という各種支援の実施率を高めたいという課題がありました。空電プッシュを導入するまで、「妊娠中のケア」と「乳幼児健康診断」については対象者の方に、はがきで案内を送り反応がなければ電話でアプローチしていました。しかし、はがきは着眼率が低く、電話もなかなかつながらない場合があります。日頃、LINEなどを使ってメッセージでやりとりをしている方にとっては、登録されていない番号からかかってきた電話に出ることは抵抗があるのでしょう。
また、「出産後の新生児訪問」については、お母さんから出生通知票のはがきが届き次第対応するのですが、なかにははがきを出されない方がいらっしゃるため、本市が目指す「実施率100%」を達成するためには何か施策を講じる必要がありました。
実施率の課題とともに、ご担当者の負荷という意味での課題もありましたか?
大澤氏:そうですね。以前ははがきを送る作業だけでも、宛名を記載したり、郵送したりと手間や時間がかかっていました。はがきで反応がない場合は一度電話をかけ、つながらない場合は留守電を残したうえで、時間を置いて2回…3回と電話をしていました。電話をかける際は保護者からの相談があることを想定し保健師が対応していました。それでも反応がなければ、こちらで把握している住所に本当に住んでいるのかを訪問して確認するなど、毎月こうした作業に膨大な時間を費やしていました。
ときには訪問までするのですね。なぜそこまで母子支援に力を入れるのでしょうか?
石田氏:私たちが目標にしているのは、すべての方にお会いし必要な支援を行っていくことですが、それ以前に「連絡が取れない」という状況に対して強い問題意識をもっていました。なかには支援を受けなくてもうまく子育てされている方もいますし、課としてもその状況を確認できれば問題ありません。しかし、連絡がつかないと養育困難や虐待など、万が一のことも想定されるため、必ずその状況を把握する必要があったのです。
導入後の空電プッシュの活用方法について教えてください。
石田氏:はがきや電話に代わって対象者の方にアプローチを行う手段としてSMSに着目し、LGWAN対応でセキュアにSMSを送信できる 「空電プッシュ for LGWAN」を導入しました。導入後は「妊娠中のケア」「出産後の新生児訪問」「乳幼児健康診断」の対象となる方のなかで、携帯電話の番号を把握している方に向けてSMSを送信しています。以前は最初にはがきを送り、次の策として電話をするという流れでしたが、まずSMSを送信するというやり方に変更しました。
空電プッシュ導入による効果はいかがでしたか?
石田氏:電話と比べてSMSの方が明らかに対象者の方の反応が良く、すぐに折り返しの電話やメールをくださる方もいらっしゃいます。最初に反応率の高いSMSを送ることで、はがきを送る作業や電話をかける件数を大幅に減らすことができました。
また、SMS送信はある程度テンプレートに沿って送ることができるため、保健師以外の担当者とも業務の分担をして対応できるようになりました。
大澤氏:空電プッシュを導入する以前、「出産後の新生児訪問」に関してはこちらから対象者の方への働きかけはできていませんでしたが、SMSという手段で積極的にアプローチできるようになったことは大きな進歩だと思います。また、「乳幼児健康診断」に関して、2020年度・2021年度はコロナ禍で受診率が下がっている自治体が多いと聞きますが、府中市では平常時とほとんど変わらない受診率を維持できました。長期的には受診率を上げていくことが目標ですが、有事の状況においては一定の成果と捉えています。
さらに、当初予定していなかったSMSの活用方法として、コロナ禍に対応して急遽オンラインで開催することになった事業の案内や、事業参加者へのパスワードの案内・中止のお知らせといった情報発信にも活用しています。やはり郵送よりもコストをかけずに多くの人に情報を届けることができ、なおかつ突然の中止にも迅速に対応できるため、とても役立っています。
最後に、今後の空電プッシュの活用や行政の取り組みにおける展望などを教えていただけますか?
石田氏:「重要かつ必ず見て欲しい連絡」をする場合にSMSは最適だと感じています。子育てについて1人で悩みを抱えてしまいがちな方に向けても、SMSで積極的にアプローチできるようになりました。今後も空電プッシュを有効に活用してさまざまな情報発信を行い、母子の皆さまの健やかな生活をお支えしていきたいと思います。
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