東京23区の東部に位置し、人口約22万人が暮らす荒川区。国民健康保険料の収納率や特定健診の受診率向上に向けて取り組むなか、2020年度に「空電プッシュ for LGWAN」を導入しました。ここでは導入に至った経緯や活用方法について、区役所職員の安達氏、佐藤氏、吉村氏、仁平氏にお話を伺いました。
※写真撮影時に限りマスクを外しています。
はじめに、「空電プッシュ for LGWAN」を導入いただいた2つの部署の業務内容と、導入以前の課題を伺います。まずは「保険料係」について教えていただけますか?
安達氏:保険料係では、国民健康保険料および後期高齢者医療保険料の徴収や、滞納者への督促などの業務を行なっています。被保険者の方から納めていただく保険料は、区民のみなさまが医療機関などで保険診療を受けるための財源であり、保険料の収納率が低ければ制度を維持することができません。また、被保険者間の負担の公平性を担保するという意味でも保険料の滞納への取り組みは重要です。
保険料係では10年前から区役所内に「納付案内センター」を設置し、納期限後に納付確認が取れない方へ督促状を送付し、それでも未納の方に対しては催告書を送付したり、個別訪問をしたりと、納付を呼びかけてきました。しかし、郵送物の場合は受け取った方が封筒を開けて内容を確認しなければなりません。封筒の前面にも「重要なお知らせ」として記載するなど工夫していましたが、ご連絡いただける方は一定数にとどまっていました。また、コロナ禍の影響で個別訪問による対面での対応も困難になってしまいました。
未納状態が長期化するとどのような問題に発展するのでしょうか?
安達氏:高額滞納となり、支払うことが困難な状況になることが見込まれます。逆に、未納の方と早い段階で連絡がとれてご相談いただければ、状況を詳しく伺い、生活の改善や必要な支援につなげることが可能になります。そのために、スピード感をもって納付確認が取れない方へアプローチできる方法を検討していました。
続いて「管理係」について教えていただけますか?
佐藤氏:管理係では、国民健康保険の被保険者のうち、40歳以上75歳未満の方を対象に受診していただく「特定健診」の受診勧奨業務を行なっています。特定健診は、例年6月下旬に対象者に受診券を送付し、7月から11月にかけて実施しているものです。毎年、区報や区のホームページ、ポスターやチラシ、SNSなどで告知をしたり、一部の対象者には受診勧奨ハガキを送付したりとさまざまな取り組みを行っていましたが、受診率は43%程度と伸び悩んでおり、対象者に対してより訴求力のある対応策を検討していました。
課題解決に向けてツールの導入を検討する際、重視したポイントはどのようなところでしたか?
安達氏:いくつかの解決策が考えられると思いますが、そのなかで注目したのがSMS送信サービスでした。SMSは対象者のメールアドレスがわからなくても携帯電話番号を把握していれば送信でき、なおかつ郵送物よりも高い着眼率が期待できます。また、見知らぬ電話番号からの電話には出づらくても、SMSであれば確認してもらいやすいでしょう。
「空電プッシュ for LGWAN」を選んだポイントは、行政専用のネットワーク「LGWAN」に対応していることです。当区の業務系システム端末の一部はLGWANに接続しています。LGWANを利用して送信する空電プッシュであればSMS送信に必要な情報をUSBメモリなどの外部媒体を使って移動する必要がありません。新たに専用回線を準備する必要もなく、高度なセキュリティを確保できると考えました。
また、すでに他の自治体での導入実績が多数あったことも信頼に繋がり、導入を決める後押しになりました。
導入後の空電プッシュの活用方法や効果について教えてください。
仁平氏:保険料係では、直近の保険料の納付確認が取れていない方や分割納付が不履行になっている方を対象にSMSを送信しています。業務システム端末から抽出した宛先電話番号のCSVファイルを同じ端末で専用の管理画面にアクセスし、データをアップロードして一斉送信できるため、セキュリティ面でも安心ですし、使い方も簡単です。あらかじめ送信日時の予約設定もできます。
どのようなメッセージをSMSで送信していますか?
仁平氏:「督促」や「催告」という言葉は使わず、「納付確認」という文言で、お問い合わせ先として保険料係の連絡先を入れてメッセージを送っています。あえて「納付確認」というフレーズを使うことで、直近の納付遅れに心当たりがある方にすぐご理解いただけるようにしています。あくまで「リマインド」という位置づけですので、納期限を過ぎてすぐであっても送りやすく、未納状態の長期化を防ぐ一手として有効だと思います。
また、保険料の納付確認のSMSには、当初、短縮URLを用いて区のホームページを記載していましたが、詐欺だと疑う方もいらっしゃったため、現在はあえて記載しておりません。その代わり区の発信であることがわかるように、発信番号とSMSメッセージには区の代表番号を使用しています。
そのほか、納付いただいてから行き違いで送信してしまう可能性もあるため、そういった方に対するメッセージも載せるなど、運用のなかで区民のみなさまの反応を見ながら内容を更新しています。
管理係での空電プッシュの活用方法や効果も教えていただけますか?
佐藤氏:管理係では、特定健診の対象者に向け、令和2年度の8月から9月にかけて週2回、合計1,551件のSMSを送信しました。結果、令和2年度はコロナ禍で特定健診の受診を控える方がいるなか、都内や23区全体の受診率は対前年度比で9割弱に落ち込みましたが、荒川区は令和元年とほぼ同率となりました。すべてが空電プッシュの導入によるものではないと思っていますが、受診率の維持に寄与したと考えられると思います。
また、SMS送信後は毎回多くの方から問い合わせをいただき、やはりSMSはみなさまの目に留まるものだと実感しています。
最後に、今後の空電プッシュの活用や行政の取り組みにおける展望などを教えていただけますか?
吉村氏:令和2年度は特定健診を2年連続未受診の方の世帯のみにSMSを送信しましたが、今後はさらに対象者を広げていく予定です。特定健診の案内に限らず、広報活動など、他事業での活用も検討していきたいです。
安達氏:保険料の徴収において、新型コロナウイルスの影響で個別訪問が難しくなった今でも、対象者にお伝えしなければいけない状況は変わりません。空電プッシュは、非接触でも対象者一人ひとりに直接情報をお伝えできる情報発信手段として有効でした。実際、新型コロナウイルスの影響により減収した方を対象とした減免制度についてSMSに情報を併記したことで送信後の反応率が上がったという実績もあります。
今後も職員のアイデアを活かし、内容や運用を工夫しながらより効果的な情報発信を目指していきたいです。
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